研究要旨

SAMURAI (Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement) 研究

主任研究者 豊田 一則
国立循環器病研究センター 脳血管内科

脳卒中はわが国の国民病であり、その征圧は喫緊の課題です。とくに超急性期から急性期は治療介入による転帰改善効果がもっとも期待される時期ですが、同時期の危険因子管理の意義は国内外のいずれにおいても明らかでありません。本研究では、国内各地域を代表する脳卒中基幹10施設を選んで下記の多施設共同研究を行い、超急性期からの危険因子管理・抗血栓療法の有効性と安全性を検証します。

1. rt-PA患者登録研究  詳しくはこちら > >

低用量rt-PA静注療法の治療成績を明らかにし、背景にある危険因子やその急性期管理、発症前や急性期の抗血栓療法が治療成績に及ぼす影響を解明します。研究参加施設で600例に及ぶrt-PA静注療法施行例が登録され、その全体成績としてわが国独自の低用量rt-PA静注療法が国外の標準用量での治療と同等以上の治療成績を得ていることを、Stroke誌に発表しました。各危険因子と治療成績の関連を調べた多数のサブ解析が、分担研究者や研究協力者によって行われ、その結果が様々な国際誌、国内誌に掲載されました。2012年に改訂された国内のrt-PA適正治療指針作成時にも、この結果が参考になりました。

2. 超急性期脳出血への降圧療法に関する研究  詳しくはこちら > >

日本人に多い脳出血の超急性期治療として効果が期待される降圧療法に関して、日本人に適した降圧手段や降圧目標を明らかにします。本主題の現状把握を目的に、全国アンケート調査を行い、解析結果をHypertens Res誌に発表しました。とくに添付文書上で急性期脳出血への使用が制限されているニカルジピンが84%の施設で使われている現状を明らかにし、脳卒中学会・脳神経外科学会・日本高血圧学会の合同で、添付文書改定意見を厚生労働省に提出しました。その結果、2011年にニカルジピン添付文書上の急性期脳出血患者への禁忌項目は警告項目へと変更され、さらに2012年にはアジア諸国でも同様の添付文書変更が行われました。上記のアンケート調査で国内多数施設が行っていたニカルジピン静注を用いた収縮期血圧140〜160 mmHgないしそれ以下への降圧の安全性・有効性を検討するため、研究参加10施設で前向き観察研究を行い、211例が登録されました。主要評価項目である72時間後の症状進行、24時間以内の降圧薬中止を要する副作用は、ともに既往文献から算出した予測値よりも少なく、ニカルジピンを用いた降圧療法の安全性が示されました。これらの成果は、日本蘇生協議会による蘇生ガイドライン2010の作成時にも、引用されました。更に米国で本主題への多施設共同介入試験Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral Hemorrhage 2 (ATACH2)を行っているミネソタ大学Qureshi教授らと連携を取り、国際共同試験ATACH2(UMIN000006526)へSAMURAI班参加施設を中心として日本からも多施設が参加しています。

3. 急性脳主幹動脈閉塞症の実態に関する後ろ向き多施設共同研究  詳しくはこちら > >

(1)の関連研究として、rt-PA治療国内承認後の主幹脳動脈閉塞を伴う脳梗塞患者1176例の治療実態を、循委20公-2班(坂井信幸班長)と合同で登録・解析しました。慢性期の良好な転帰には、年齢が若いこと、初期重症度が軽いこと、内頸動脈閉塞例でないこと、および再開通療法の施行が関連していることが示され、J Stroke Cerebrovasc Dis誌に発表しました。

4. 急性期脳出血患者への抗凝固療法再開に関する多施設共同観察研究  詳しくはこちら > >

(2)の関連研究として、心房細動患者の脳出血発症後の抗凝固療法再開について全国アンケート調査を行いました。来院時のワルファリン是正手段や抗凝固療法の再開基準とその方法は施設によってさまざまであり、標準化の必要性が示唆され、この結果をJ Neurol Sci誌に発表しました。本研究班参加10施設で、さらなる前向き登録研究を行い、52症例が登録され、その1年間の追跡調査を終えました。今後解析を進めます。

5. 非弁膜症性心房細動を有する急性期脳梗塞・一過性脳虚血発作患者に対する多施設共同観察研究

心房細動に伴う脳梗塞に対しては、再発予防として抗凝固薬が第一選択です。近年、新規抗凝固薬が次々と国内で承認され、使用可能となっている現状を踏まえ、心房細動を持つ患者さんに対する抗凝固療法の選択内容と、脳梗塞の再発や薬剤による副作用、短期・長期予後の関係を明らかにします。2011年から2013年にかけ、国内18施設で1000例超の患者さんを登録することを目指しています。この研究は、UMIN (000006930)、米国NIHのClinicalTrials.gov(NCT 01581502)にも登録されています。

6. 直接トロンビン阻害薬・第Xa因子阻害薬内服中に発症した重症出血合併症に対するプロトロンビン複合体製剤を用いた止血治療に関する研究

近年、心房細動患者における塞栓症の予防や静脈血栓症の治療・予防目的で直接トロンビン阻害薬・第Xa因子阻害薬が次々と承認され、国内で使用可能となっています。これらの新規抗凝固薬に関して、副作用として一定の割合で出血性合併症を招くことが考えられますが、現段階で緊急止血治療法として効果が確証されたものはありません。プロトロンビン複合体は緊急止血の手段として有望とされており、新規抗凝固薬内服中の重症出血合併症に対するプロトロンビン複合体製剤の有効性・安全性を明らかにします。

※ このHPに掲載した「研究概要」は、「厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業、わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究、平成21年度総括・分担研究報告書」の総括研究報告を、改変して書かれています。