ご挨拶

脳卒中はわが国の国民病です。一般住民調査などからも、日本人がいかに脳卒中を起こしやすいか一目瞭然です。しかし長い間、脳卒中は「難しい病気、治りっこない病気」と認識され、これほど患者数が多く社会へのインパクトも大きな病気でありながら、治療が進んできませんでした。欧州でも脳卒中はシンデレラ病と呼ばれ、「冷たく不当に扱われてきた」と思われてきたようです。

新世紀を迎えて、この脳卒中診療を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。MRIや超音波診断の発達で超急性期診断(敵を素早く詳しく知ること)が可能になり、その追い風を受けて血栓溶解薬t-PA(ティーピーエー)をはじめとする多くの新薬、脳血管内治療による血栓除去など新しい治療機器が使われるようになりました。今や脳卒中は「治り得る病気」であり、多くの医療者が脳卒中患者さんをより良く治すべく、真剣に前向きに日々の診療に取り組んでいます。

しかしながら、新治療が開発される一方で、ごく基本的な治療の多くが未解決であることに、私たちは気づいています。たとえば脳卒中を起こしたばかりの患者さんの血圧や血糖を、どのように管理すればよいか。簡単なようでいて、誰も答えを知りません。脳梗塞のハイリスク患者である心房細動を持った患者さんに対して、昨年来新たな予防薬(抗凝固薬)が世に出ましたが、日本人における有効性も詳しくは分かっていません。また日本人の脳卒中には欧米人と異なるいろいろな特徴がありますが、現在の治療法の多くは欧米の研究成績に基づいて開発されており、「日本人にとって最良の治療法」を日本人の治療データからみつける必要があります。

私たちは、平成20年から全国10施設で共同して、最良の脳卒中急性期治療を確立すべく研究に取り組んでいます。厚生労働省からの研究助成を受け、最初の3年間は「わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究」という研究課題で、また平成23年からは新たに「急性期脳卒中への内科複合治療の確立に関する研究」という研究課題で、研究を続けています。解決すべきテーマは多々ありますが、全国の医両者の方々のご協力をいただき、研究を進めています。内科治療の基本である危険因子管理を主軸に脳卒中を治すとの思いを込めて、研究班の名前をSAMURAI研究班(Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement)と名付けました。私たちの研究成果を多くの方々に知っていただくため、ホームページを立ち上げました。この情報発信によって、脳卒中征圧という私たちの大目標に少しでも貢献できればと、願っています。